Everything is awful(全てが最悪だ)は本当に”全てなの?「苦境からの立ち直りを妨げる3つのP」について
ひとつの衝撃的な出来事や嫌な事があると
それによって、
生活全てに影響してしまい
全てが最悪な状態になってしまいがちです。
そういう経験は大なり小なり、きっと誰にでもあるのではないかと思います。
子供の障害に悩む時の親も然り。
何もかも辛い
何も愛せない
全部憎く思えてしまう
障害児育児に悩む現役ママにお話を伺っていると、
とてもよく聴くのは、このような言葉だったりします。
その状態は辛いはず。よくわかります。
私も、娘の障害のことで悩みの真っ只中だった時は
人生が全部不幸に思えていましたし、娘のことなど全く
可愛いと思えない。と思い込んでいました。
でも本当は”全部”不幸ではなかったし
”全く”愛せないのではなかったのです。
話は少し飛びますが、
私は4年前に夫をガンで亡くしています
重度障害児の娘がいる私を丸ごと受け容れてくれての再婚で
本当に寛容な夫だったのに
54歳の若さで亡くなってしまったのです。
その時も、どうして私の人生はこんなに辛いことばかり起こるのだろう。
全くひどい人生だ。
とその悲劇に人生を全部持っていかれそうな時期があったのですが
それまでに娘のことである種の修羅場は超えていたので、
自分の軸は見失わず、割と早い段階でこの体験をどうこれからの人生に生かそうか、
という切り替えはできていたと思います。
そこで、その頃に伴侶を亡くした人たちがどう立ち直っていったか。
ということをよく調べていたら
Facebook coo のシェリル サンドバーグ氏がカリフォルニア大学
バークレー校の卒業式で行った名スピーチがヒットしました。
サンドバーグ氏自身が一年前に夫を突然亡くし、
その悲劇から学んだという、苦境を乗り越える時に大切なことが語られていて
とても素晴らしいスピーチだったので何度も動画を観ましたが
(その後、同氏 著書の「option B 逆境 レジリエンス そして喜び」も読みました)
その中で語られている
数十年以上に渡って、人がどのように挫折と向きあうのかを研究してきた、
心理学者のマーティン・セリグマン氏による
「人々が苦境に直面した際、立ち直りを妨げてしまう要因として3つのPある」
ということにとても共感したのです。
私も昔、娘の障害のことで真っ暗だった時は、まさにこの3つのPに囚われ
ていたな。と思えるし、その後、幾度の苦境を乗り越えたら、自然とこの3つのPに囚われない心になっていたんだと実感しています。
だから今は大変なことがあっても立ち直りが早いと我ながら思っています。
この3つのPからの解放は、とても大切なので、子供の障害のことについて悩む方や
現実に起こることで苦しみを感じる方に
よくこの3つのPのことをお話ししています。
〜立ち直りを妨げる3つのPとは〜〜
・Personalization(自責化 自分のせいにしてしまう)
・Pervasiveness(普遍化 ある出来事がすべてに影響(派生)すると思い込む)
・Permanence(永続化 永遠に続くものだと考える)
特に今回、一番お伝えしたいのは2つ目のP
Pervasiveness(ある出来事がすべてに影響(派生)すると思い込む)ですが
まず、3つのPに陥らないための回避の方法についてそれぞれ、
障害児育児の困難と照らし合わせて考えてみました。
1つめのP
【Personalization (自分のせいにしてしまう)】
よくない出来事が起きてしまった時、その出来事は自分のせいで起こったと
思いこんでしまいがちですが、それが苦しみの要因のになっているというもの。
例えば、障害児が生まれてしまった時
母親は、なぜ、健康に産んであげられなかったのだろう。とか
妊娠中にもっと気をつけることがあったのではないだろうか。
という思いで自分を責めてしまった方もいらっしゃると思います。
私も妊娠中に満員電車に揺られて通勤し続けたのがよくなかった。とか
体を冷やしてたのか。と
根拠のないことを思って、私のせいだと随分自分を責めていたし、
夫が亡くなった時も、もっと私が違う治療を調べていたら。
とか、もっと早く私が気づいてあげていれば。と思っていましたが
その出来事全ては、結局運命だったんだ。と後に思うことができ
辛さが緩和されていきました。
そう。Personalizationとは、
降りかかった悲劇は自分だけのせいで起こっているのではない。
と切り替えることで回避できるのです
そして、ここでもっとも重要だと私が感じたのは
2つめのP
【Pervasiveness(ある出来事がすべてに影響(派生)すると思い込む)】
冒頭で触れましたが、
ひとつの出来事によって、その生活全てに影響してしまう。ということ。
ひとつ素晴らしい出来事があると、
もう人生全てがバラ色になるし
逆にひとつ、悲劇が起こると、人生全て悲しみや苦しみに持っていかれてしまう。
ひとつの出来事で
Everything is awesome (すべては最高!)にも
Everything is awful(全てが最悪だ)にもなってしまう。
とこのスピーチの中でも述べられています
最高!の派生はとてもハッピーな感じがしますが
最悪!の派生は辛いものです
でも、悲劇に覆われしまっても
本当に「全部」に影響するのでしょうか?
何もかも辛い
は本当に何もかもなのかしら?
抜け道は日々の瞬間の中にもあるはずなのですが
辛い気持ちに覆われてしまうと、その瞬間を感じる余裕はなくなってしまいます
例えば
気分は最悪だけど、今朝天気予報が耳に入らなかった?
あ。今日は風がちょっと冷たいな?とか
一瞬感じなかった?
携帯のニュースに目を向けなかった?
LINEをチェックしたりしなかった?
ね、一瞬でも悲劇から離れたことがあるのです。
悲劇の中でも
空を見上げてみたら、ほんの一瞬でも心地よさを感じるはず。
ふと、道端に目を向けると、お花が綺麗に咲いていたことに気づいたり
数分、暖かいお茶を飲んでホッと息を抜いてみたり。
ある一つの辛い出来事で人生のずべてが辛いと
思ってしまうけれど、
本当は「全て」ではないのですよね
Pervasiveness(すべてに影響(派生)すると思い込む)という問題は
日々の中で一瞬一瞬を感じることを意識すれば
回避できるのです
そうして感じられた
ほんの一瞬のリラックスタイムの心地よさとか
一瞬全く違うことを考えていた、とか。
それを感じる積み重ねが
辛い日々に光を与えて、その出来事に重く覆われた心を
徐々に晴らしていくはずなのです。
そして3つ目のP
【Permanence(永遠に続くものだと考える)】
悲しみ、苦しみに全て心を奪われている時、
その暗いトンネルは一生続いてしまいそうなくらい光が見えないものだけど。
絶対にそんなことはありません。
出口の光が見える日は必ずやってきます。
万物は流転するってことです。
一生トンネルの中だなんてありえません。
月並みだけど、明けない夜はないし
やまない雨もないのです
だからそれを信じていれば、Permanence(永遠に続くものだと考える)の
問題は回避できます
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思いがけない出来事に直面したり、突然
未知の世界に引き込まれたりするとき、
誰もが必ず戸惑ったり、ショックを受けたりして
辛さに覆われてしまうし、生きていれば、これからもどうしたって
予期せぬ出来事や、ショッキングなことは起こるでしょう。
でも、そんな時はこの3つのPに囚われてしまっていないかを
自覚することができ、回避の方法を意識していけば
立ち直りを早めて、次のステージに進みやすくなるのでは
ないかと思うのです。
苦境って、その起こってしまった出来事が辛いというより、
その出来事によってこの3つのPのような反応に囚われていることが
辛らい要因だったりするのです。
「私だけのせいではない!全てではない!ずっとじゃない!」
そういう気持ちを持てると、希望が湧いてくる気がします。
で、苦境に見舞われた時、この3つのPからの解放はどれも大切ですが、特に
2つ目のPervasiveness(すべてに影響すると思い込む)を解くことが
重要だと個人的には思っています。
それを実感した私のある体験を思い出したので、次回はその体験談をお伝えします。
冒頭でお話しした、人生全部不幸だ、子供のことなど全く可愛くない、と思っていた私が「全部」が不幸ではなく、「全く」愛せないのではないと徐々に気づいていった体験。と、そこで培ったことが、その後に役立っていたというお話しです。