【第12話】こども医療センター 誘い(いざない)の場

心が最悪に苦しい状態から
色々な時間、出来事を経て

少しずつ
私の心は変化がみられるようになっていました

落ちたり、穏やかに過ごせたり
まだまだ
行ったり来たりだけど、

でも、娘のことを
可愛いと思える日が前よりは
随分と多くなっていた感じです

娘3歳、そんな頃かな?

この頃は

こども医療センターの受診科が
前よりも増えて、通勤のように
忙しく通っていました

整形外科
内分泌科
形成外科
神経内科
眼科
内科

と、受診を間違えないように
するのが大変。

だけど、そうやって色々な科を
行き来しているうちに

普通とか常識とか、平均とか
そんな枠の中だけで生きていては

知るはずもなかった世界を
感じていくことになりました

手足がない子がいたり

酸素ボンベが24時間手放せない子や

急に奇声を発する子。

お顔の右と左が非対称な子や

全身が硬直している子も・・。

一瞬、目を覆ってしまう状態の子

そんな子供たちにたくさんの時間
接することになり

ふと

普通って何だろう。。って思わず呟いていたことが
ありました

数年前初めてここに来た頃は

まだ、娘が生後半年の頃で

娘のことを”普通の子”に追いつかせることに
囚われていた頃

障害は”治る”ものだと信じて
障害を受け容れる観念もない頃です

私は

障害のある子が、
こんなにたくさんいるのを見たのは初めてで

まずそれに驚いたし

なんと言っても、そんな世界のことを
怖いと思っていました

だから、直視できなかった

正直、ちょっと具合が悪くなりそうな
そんな感覚でした

それに、心のどこかで、
この仲間に娘が入らなきゃいけなの?

という、恐怖のような感情に陥ったりもしていました

でも

それから、一段一段
心の段階が変化して
自分を縛っていたものを
崩しかけていたこの頃の私は

その見える景色の捉え方が
変わっていました

そこで

さっき言った”普通”って何?って
っていう言葉が、自然に無意識に出て来ていたのですね

そんなことが心に浮かんでから

ここに通うごとにその疑問は
広がりをみせていき

普通とか、常識とか、当たり前とか
そんな枠が外れて、私の世界が広がっていくのを
徐々に感じていくことになりました

私がここに初めて来た時

障害者というと

奇妙

怖い

暗い

不幸

そんな印象しかなかったのです

あれから数年で
目の前の景色が違って見えてる自分が不思議

でも、それは
暖かさを含む変化でした

この頃
何度もこの
こども医療センターに通っていて

様々な症例の障害児を眺めているうちに

人間であることの
振り幅ってすごいな

きっと無限なんだろうな

なんてことを思い始めていました。

世の中が決めた
規範から外れた世界

世の中を映し出す映像の
フレームの場外には

こうして、無限の人間の姿があるんだな。と

でも、どんな姿でも
どんな状態でも

一つ一つちゃんと人間の命として
一生懸命生きているのです

そんな命に寄り添っている
家族が、穏やかに微笑んでいたり

大きなバギーの我が子のために

暖かい毛布で包ませてあげているママがいたり

そんな景色を見ていたら

どの命も尊い!!

と感じられました。

そう感じられたことで

何だか、まだぼんやりしていたけれど

そして、うまく言えなかったけれど

光が見えた気がしたのです。

ここ、こども医療センターは

その後の私の人生において

ありのまま

持って生まれたもので生きることが

一番豊かなんだ、ということや

命であることに、基準なんてないんだ。

という根幹を
作ってくれた最初の場所だったのです

(続く)