【第6話】何で私だけ? だんだん保てなくなる心

一歳を過ぎて娘は
周囲の子との違いが顕著になってきて

私はもう
いつものママ達と会うことを
避けるようになりました。

お散歩も違うコースを
コソコソと誰にも合わないようにしていたり

車で家から離れた場所にいき
娘を外気に触れさせたりしていました

なんとか避けてきた
”障害”や”異常”がもう逃避できないくらい
明らかになってきていたけれど

それを受け入れるという意味も
方法もわからなかったのです

そう

この時点でも
”病名”という大義名分がないから
余計、何で??に巻き込まれていきました

今まで感じたことのない
感情が押し寄せてくるのを感じながら
それに
どう自分で対処して良いのか
わからない

それでも

娘にミルクを飲ませ
ペースト状の離乳食を作り

可愛いカバーオールを着せて
お日様にあててあげようと
頑張っていたんだと振り返ると

我ながら何とも健気な光景です

そして

恐怖が迫ってくるのを感じる中
追い討ちをかけるように
娘は初めての痙攣発作を起こします

初めての発作は

一歳を過ぎてすぐの頃

目を見開き
体も顔も硬直して

見たこともない紫色の顔

そして触っても反応が全くない

初めてのその様子に私は気が動転し

さきちゃんが死んじゃう!!
助けて!!
と泣き叫んでいる間に

夫が救急車を呼び
気がついたら
病院に着いていて
処置も終わり大きな波が去っていた感じ

いつもの娘が病院のベッドに寝ていました

レモンイエローの
胸に可愛いくまさんの顔が刺繍された
私のお気に入りのカバーオールを着て

少しピンク色のほっぺたをして
スヤスヤと寝ているそのお顔は
いつもの気持ちよさそうな寝顔です

その日の朝
娘を着替えさせる時
お天気が良いから、明るい色にしようね
と楽しい気持ちでカバーオールを選んだのに

夕方の私の心は
重たく、何かがのしかかったように
固まっていきました

そう言えば、

いつかの染色体検査の際に
てんかんの症状が後に出てくるかも

と先生が話していたような・・・。

どこか人ごとのように聞いていたけれど

それが現実に起こってしまい・・・。

ふと

生まれた時に先生に
告げられたことと
その時の光景が鮮明に蘇り
ゾクっとしました

何かの間違いであるはず
障害なんてない

と、ずっと娘に告げられたことを
否定していたけれど
もう否定しきれなくなり
これから先
先生の告知通りのことが起こるのかと
怖くなったのでしょうね

脳波の検査をして

やはり
てんかんを起こす脳波であると診断されて
それから、投薬治療が始まりました。

この時の痙攣発作に伴う入院は
3日ほどで済みましたが

それからというもの

頻繁に痙攣発作を起こすようになり

加えて

娘に合うようにと
ペースト状に作った離乳食は

1日3回を少量ずつ食べさせるも
うち2回は噴水のように吐いてしまう

という摂食障害の症状も出始めて

だんだんと”異常”が増えて
想定外な出来事が続くようになりました

次々と起こることが
理解の範疇を超えていて

その度に”何でなの?”という反応に
激しく心が持っていかれます

けれど、目の前で生きている娘が
生きていくための手を止めることもできる
はずもなく・・・。

何が起こっているのかを把握できないまま
想定外の娘の動向に
対処するしかない。

こうして

訳のわからない渦の中に
巻き込まれていくのでした

周りには誰もこんな経験している人いないのに

何で?

何で私だけこんな思いをしないといけないの??

と、そんな孤立に向かう辛さにも襲われて

夜中に急に涙が止まらなくなったり

食事をしても嘔吐したり

いよいよ私は心が保てなくなっていきました